談春さんのにぎわい座の会。
前座は、出囃子がこはるさんでおやと思う。
客席からも驚きと期待の拍手。
師匠の会なので、といいそうな、マクラもほとんどなしの権助魚。
マイクの調子が合わないのか、声がなんだか割れる。
後半は問題なし。
座布団を返しに出てきた背の高い男の子は生志さんのお弟子さんとか。
こはるさんに真打になれといったのに、いえ、と断られたと、ひとしきり。
タイミングというものがあるのに、断ったことを後悔してもらう
などといけずな言いようで。
断るこはるさんもだが、この師匠も弟子もどちらも面倒臭いところはよく似ている。
談春さんの天災。
途中で筋と登場人物が飛んだのかふっと心もとない箇所があるが
そこからは乱暴で粗忽、それでいて妙に調子が良く、機転がきいて弁が立つ
不思議な主人公に客席はくすくすしたり一人噴き出す人がそこここに。
中入り後、子は鎹。
これが・・・なんというか抑制が効いていてとてもよい。
酒におぼれて妻子を追いだし、吉原からかみさんを迎えたもののうまくいかず、
そこから仕事に励んで人生を持ちなおした男が
別れて3年たった我が子に再開し・・・という話なのだが。
男の屈託と、職人らしい意気地と年相応の落ち着きと男気。
妙にひねているがかわいげのある大人びた子供の造形。
もじもじと、お互いに遠慮して他人行儀なまま、よりを戻したいといいだせずに
別れようとする夫婦のさまを見て、子供が放つ言葉もいい。
おや、すごくいいじゃないか。
今まで聞いたことがない新境地で、ああ、これはと思う出来。
この、考えすぎてしまう人間の面倒でかわいいところ、
相手を思うあまりの不器用さ、照れ、がこれ見よがしではなく
押さえた調子で響いてくる。
映画やテレビの出演も、ようやく落語にも肥やしになってきたかしらん。
この人のもつひねたところや面倒くささ矜持やらが、洗練されてほどよくでている。
今回はすごくよかったなあ。
というわけで。
こちらも面倒くさい師弟同士、真打昇進の話はもう一度じっくり話てみてね。
こはる:権助魚
談春:天災
中入り
談春:子は鎹