目黒にて談春さんの会

新春公演なので初春気分の仕掛けがあるかしらん

と思って出かける。

公園の中のホールは日が落ちると真っ暗で足元も見えず、

折からの寒さもあり寂しい限りだが、

その中で灯のともるガラス張りのホールのロビーが見えてくると

たいそうきれいな幻燈のようでもある。

 

 

こはる:権助提灯

談春:替り目

仲入り

談春文七元結

 

 

セットに、地味に手間がかかっている。

背後は開口一番からが障子に薄青い明かり、仲入り後はふすまに変わっている。

コロナ下でもあるから、ロビーには何もなく、チラシも2枚だけ座席におかれている。

 

 

こはるさん、調子を戻したかな、と思うのだけれど。

口跡も噺のノリもよく、権助も旦那もいいのだけれど

本妻とお妾さんが、どうも同じに聞こえる。

後半のやりとりになれば、どちらもキーキーしているだけとはいえ。

それと、なんだか不思議に全体として少し皮肉っぽいというのか

意地悪な印象が。

さて、なんなのか。

 

 

こはるさんのあとに、湯呑をもってあがった若い衆。

遠めでよくは見えないけれど、良さ気な着物だったので誰かのお弟子さんか。

所作がきれいで、印象に残る。誰だったのかな。

 

 

談春さん。

晦日のさださんの公演にど頭で出演した話と「芝浜」を45分に撒いた話などから、

つい、とその場で5分ほどで芝浜を口演。

こういうものだってできるけど、ついでにいえば志らくの芝浜よりはいいだろうけど

といって笑いを取りながら、それじゃ自分の落語(のよさ)が云々、と。

続けて、さっとはいった「替り目」はギャグ(くすぐりというのかな?)の切れもよく

そこここで噴き出す男性の笑い声が耳につく。

女性ファンも増えたけれど相変わらず男性客も多い。

 

 

仲入り後の「文七元結」は、いきなり佐野槌の女将さんとの会話からはいる。

枝葉を取って核心からはいって、女将さんとのやり取りに時間をかけ

それでいて、この女将が余計なことは言わずにさっさと本質をつくものだから

ぐうの音も出ないほど説得力のある深い会話が続く。

ついで、吾妻橋でのくだりも時間を取る。

この部分は、噺の展開としてなかなか説得力をもたせにくいところだが

時間をかけて組み立てている分、自然につながる。

師匠が亡くなって何年になるの、という女将さんの問いかけに

「7回忌をすませましたから・・」というあたりは、没後10年の談志さんを

思わせる。つい、説教を食らう長兵衛さんに演者を重ねたくなる。

そうそう腕は上がらないだろうけれど、それでも後に続く若いもののために

努力し続けなればいけないんだよ、という女将さんのセリフは

自分に言い聞かせているような。

 

 

気迫のこもったいい「文七元結」でした。

新春なので3本締め。まずはコロナに十分気をつけて健康で、と。

はい、今年はいい年にしたいですね。