三十石
米朝さんのCDで聞いてから、三十石はとても好きな噺のひとつ。
TVの「日本の話芸」で桂春若さんがかけるというので聞いてみる。
ご本人はこの噺を先代の文枝さんに教わったとのことだったが
舟の櫓の漕ぎ方は、談志さんにも教えてもらったとのこと。
この噺だけでなく、船に乗る噺がどうしてだか好きである。
談春さんの九州吹き戻しもそうだが、その当時の風俗が描写されて
さしずめ、ある情景を切り取るのが浮世絵なら、
こういった噺は絵巻物かな、と思う。
次々と情景が移り変わり、やがてその道中のあれこれが
くだらないことやしょうもないことも含めて
なんともいえない情感とともに描かれる。
舟唄もいいし、上方落語らしい音曲もいい。
岸辺から行き先を尋ね、ちゃっかりと船頭に土産をねだるおなごし(女中)さん
やら、それを軽くいなす船頭やら、とテンポもいい。
知らぬ土地を旅している気分になる。
筋がわかりやすく、起承転結のはっきりした人情噺もいいけれど。
こういう絵巻物を眺めるような楽しさもあっていい。
話芸ではこんな楽しみ方も、と思う今日この頃。