牡丹灯籠

談春さんと三三さんの牡丹灯籠を、

友人にチケットあるよと声をかけてもらいでかける。

リレー形式での牡丹灯籠で、高座前のトークによると

談春さん曰く、2人の声のトーンが似ているからとのこと。

例によって、あちこち脱線するトークだが

三三さんは切り返し含めてトークが随分上手になっている。

名古屋や九州ですでに同じ会をやっているために

少しだけ、いつもの遠慮がなくなってきたのか、あるいは

ここまでは踏み込んでも大丈夫というラインがわかってきたのか。

堅いだけだったのが見違えるよう。

 

 

 

ごあいさつ:談春 三三

宮戸川:三三

お露と新三郎~三崎村まで:談春

中入り

三崎村からお札はがし~お米談判まで:三三

粗忽の使者:談春

ごあいさつ:談春 三三

 

 

口開けの三三さんの宮戸川、これは前半まで。

(わざわざ(上)とは入れないと見える)

雷が鳴ってお花が半七にしがみつくあたりから、官能小説風に終わるのだが

これから怪談話が始まるのに、ちょっと妙な空気感。

客席をこれからはじまる話とは質の違う笑いで

まずは暖めておく、というのと、結果としてちょっと違ったような。

 

 

談春さんの高座。

新三郎の美丈夫さゆえに二人の運命が狂い始め

それがこの時代の身分制などにもからんで悲劇に至るというあたりは

丁寧に語られる。

人相見の叔父も、お露と新三郎は前の世から・・と因縁話めいて語ることで

お露の念の強さと2人の縁の深さを醸す。

ただ、円朝話によくある因縁が続き長講になるという展開かと思うと

ここはそうではない。そう考えるとこのくだりはちょっと誤解を招くかしらん。

 

そして、三崎村で真新しい墓を見つけるところで切れるはずが

うっかりその正体を語ってしまい、袖に向かって

この前までだったか、というような声をかける。

 

 

中入り後、三三さんのパート。

まずはマクラで、

本編が始まると「実はその墓はお露とお米の墓で」と

そこからぐうっとお客さんが引き込まれていくはずだったのに、と

この前段の「語りすぎた」顛末を解説。愚痴って笑いをとる。

するとそこに陰アナがはいり、談春さんが謝る、

またそれを三三さんが、高座にマイクを入れられたのははじめて

と、くさして笑いをとる。

 

 

本編では三三さんのお露が存外怖い。

美人が無表情、フラットな声で「新三郎さんに会うの」と繰り返すのは

尋常ではなく、いかにも生半可でない一念がありそうで。

ただ、ネタ出しのお札はがしのお米の談判まではいかずに

お札があり中に2人の幽霊が入れない、というところで切れる。

 

 

談春さんは粗忽の使者で締め。

緊張感のある怪談話の長講で、正直疲れてくる頃合いなので

爆笑できる滑稽話は助かる。カタルシスもあり、で。

 

 

最後のトークを含め、目指す3時間にぴったりとのことだったが

うーん、トークはいいからお札はがしのさわりが聞きたかったわ、と。

3回にわけての通し公演で、しかもリレー形式。

2人の演者にそれぞれ見せ場を、かつ上演時間も制限がと考えると

切れ場をどこにするか判断するのも大変なのだろう。

三三さんは、次回2回目でお札はがしを一気にやるとのこと。

まあ、切れ場としてはそうなのだろうが、

3回通しではなく、1回だけ聞いても大丈夫と筋書きを売っているのだし

1回しかチケットをとれていない人からすると

ここまでは聞きたかったなあ、などと。

後日、同じ会場にいた知人からも同様の感想。

 

 

牡丹灯籠というと、一般人の持つイメージとしては

そして、怪談話としてのハイライトは

牡丹の花のついた艶やかな灯籠を持ち、お露が下駄をならしてお盆の入りに

夜道をやってくるところ、

2人の仮住まいの三崎村を探し回るもみつけられず

帰りがけに通った寺の墓所で何か気になってふっと見やると

真新しい墓に牡丹の灯籠が置かれていて、やがて2人の墓だと知れるところ。

幽霊と気づいた新三郎が、高僧にもらったお札と如来像で守りを固め

幽霊が中には入れないとわかり、心変わりをしたと歯ぎしりするところ

そしてお札はがしのくだり、となろうか。

 

 

その先は、幽霊談と言うよりはむしろ悪事に手を染め

何食わぬ顔をして成功する人間がさらに転落する有様に

別の意味で怖くなる、ということで、話の質感は違ってくる。

(殺されたお峰が、女中に取り憑いて悪事をうわごとで語るくだりはあるが)

怪談話の肝は人間の怖さではなく、その念が引き起こす怪異なのだから。

 

 

まだ早い時間に舞台がはねたので同行の友人とともに軽く飲みに出かけ、

それこそいろいろな話をしながら、案外長く、楽しく過ごす。

公演前に出かけた銀座のギャラリーの石内都展も素敵なライティングで

(照明で、組み写真のような展示を構成していて)

こちらも新鮮だった。

 

 

フルに楽しめた、秋というにはまだ暑すぎる休日。