志の輔noにぎわい
にぎわい座の20周年記念公演の第2弾に出かける。
寄席形式だからトリに志の輔さんが一席かしら、とおっとりと
出かけると開口一番からご本尊が登場。
どこぞの国の紛争騒ぎをマクラに、隣家のタケノコの越境という
ほのぼのした話で始まる。
ついで、国連と先進国の会議をもってしてもという話から
マンションのなにも決まらない理事会の新作へと続く。
中入り後は、おなじみの鉄九郎さんのユニットの長唄三味線。
そして最後は古典の帯九でたっぷりと、という充実の内容。
志の輔:たけのこ(新作)
志の輔:異議なし!(新作)
仲入り
鉄九郎一座:長唄五連者
志の輔:帯九
志の輔さんが司会を勤める長寿番組が打ち切りとなり
思い入れもあってか、当人もがっかりしていたという話しも聞く。
ファンからすれば、いっそ落語に専念できるからいいのでは
という声もあるのだが、落語以外に創意工夫をする番組も
ひとつ力を入れていた様子でもあり。
考えてみれば入門後すぐに、師匠の談志さんが落語協会をやめて
ことあるごとに「立川流になって初の弟子」ということで
背負わなくてもいいプレッシャーにさらされてきた、と思う。
ちょっとしたコメントにも周到な配慮がのぞくあたりは、
毒舌ぞろいの一門の中でも、立場がにじんでいる
といったら穿ちすぎだろうか。
ご本人は、その中で修行の場所からして自分で開拓しながら
試行錯誤をかさね、新作を始め古典も独自の工夫で作りかえ、
現代的でわかりやすい「志の輔らくご」というスタイルを確立する。
それにあきたらず演劇的な空間表現を取り入れたパルコ公演は
落語界初の1か月ロングラン公演となり、
話題を集めるだけでなく恒例化し・・と
人気も実力も、古典も新作も、という売れっ子になって現在に至る。
ひとつ、手のかかる番組を終え、時間が多少できたからには
ぜひ違う形での志の輔らくごの進化形を、と望むのは
まあファンの勝手なのだろうが。
演劇的な要素とはまた違った形での要素をプラスして。
よい出会いがあれば、それによってまた志の輔らくごも
まだまだ進化していく。
三本締めで会が締まって席を立つと、「やっぱり古典がいいよなあ」
という声が聞こえてくる。
(映画を見ているような気分になれる大作なら、私は新作でもいいけれど)
心の中でつぶやいて、やっぱりファンというのは勝手な期待を
するものだから、と。
堪能、充実の会を終えて、横浜をあとにする。