談春さんの独演会

落語会も都内も久々。

午前中に所用があり、半端な開演時間の回を選ぶ。

土曜日の午後5時。

同じ日に午後1時の回があり演者には少々きつい2回廻し。

所用のあるこの日を選んだのは、演目が珍しかったから。

ネタ出しをした芸歴40周年記念の公演のひとつ。

この世界に入門して40年とは・・・長くて想像がつかない。

 

 

都内に着いたのは一番暑さの厳しい時間帯だが

せっかくだからと美術ギャラリーを見に行く。

銀座界隈では、聞こえてくるのは外国語ばかり。

歩行者天国を歩く人の半数は外国籍ではないか、と思える。

ブランドの買い物袋を抱えた欧米人やアジア人がとにかく多い。

ハイブランドの服飾雑貨の店の上階にある現代美術のギャラリーでも

同じく外国人が半分ほど。

こちらに来る人は買い物袋は持っていない。

 

 

土をテーマにした美術ワークショップを開催したとのことで

そこで制作された土壁の、ちょっとしたタイニーハウスが展示されている。

中に入ると空気穴の所々開けられた土壁の空間は、繭のようでかなり落ち着く。

ほんの少し、涼しいようにも感じる。

ここにくると普段の生活と少しだけ違った時間に浸れる。

 

 

談春トーク

談春:景清

中入り

談春妲己のお百

 

 

はじめのトークは、今日の演目が笑いの少ないものなので

笑える軽い噺のかわりに、ということらしい。

最近出演したドラマや映画、トーク番組での話に加えて

(講釈ネタは談志さんの十八番だったこともあってか)

師匠の話なども。

 

 

景清。

職人が神仏にまで威勢のいい啖呵を切るというもので

それで一度は治りかけた目が、逆戻り。

最後は大願成就するが、その展開が落語らしく落とし話で終わる。

威勢のいい啖呵は、息継ぎが大変なようで

「大工調べ」のような長い啖呵の演目は、

演じられることが少なくなってきたように思う。

 

 

妲己のお百。

以前、講談で聞いた「妲己のお百」の話と混同していたようで

長いこの話の、違う一部と勘違いしていたらしい。

自分で殺した亭主の人魂を見て、

「死んでまでも出てくるなんて、よっぽど私に惚れてるんだねえ」

とうそぶく、ほれぼれするような美人、というイメージ。

 

談志さん以外には、この話は講談師しかやらなかったのではないか

ということで、この演目を目当てに聞きに来た。

それなのに、以前一度聞いているはずが、すっかり忘れてしまっていた。

家に戻って談志さんの話を音源で探して聞いてみる。

 

照明が変化し、鳴り物が入る。

怪談仕立ての演目になっており、場内の悲鳴が聞こえるので

お弟子さんなどが幽霊に扮して会場内にいたのかもしれない。

 

今回は素話。照明と鳴り物だけ。

ただ、話の運びは、談志さんのものにほぼ忠実。

こういう話は、師匠との違いを出すのはなかなか難しそうである、

心地のいいトーン、調子のよいリズム。

いわゆる名調子で、息詰まるようなドラマチックな展開。

完成された芸だよなあ、と。

 

 

貞女というのは時代(世情)の移り変わりにより変わるようだが

悪女というのは、あまり変らないのではないかしら。

そんなことを、ゆっくり考えてみよう、と思う。