談春さんの独演会 

落語家生活30周年の記念ツアー、
そのオーラスのファイナル公演が8月頭に渋谷であるのだが、

それが取れなかった人のために追加公演をしたのがこの日の会。
追加公演なのに、先にやっちゃうんだけどね、なんて
ご本人もちゃかしている。


目黒区、柿の木坂をあがったあたりの
公共施設と公団の集まる緑豊かな一角に区民ホールがあり
会場はそちら。


春風亭正太郎:権助魚
談春:たがや
談春:小猿七之助(音曲つき)
中入り
談春:居残り佐平治


開演時間が18時半と早いせいか
びっくりするほど遅れ客が多い。
談春さんの話がはじまる15分後でもとぎれなく
1部の終わる20時の直前まで遅れ客がいた印象。
19時の時報が2、3、切り忘れた携帯電話から流れてきて
落ち着いた客層なのかと思いきや、あれあれと。


柿の木坂に実家があるという正太郎さん、元気に権助魚。
枕の老人ホームネタで笑わせる。
座布団とめくりを返す前座さんは借り物で
小せん師匠のお弟子さんとか。

談春さん、正太郎さんとも小せんさんとも
さだまさしファン同士、とご紹介をして
今日は3席夏の話を、とまずは「たがや」。
肝になる部分のことを簡単かつわかりやすく説明をする。
テンポよく喧嘩場の情景描写が続き、
江戸弁の啖呵がぴしぴし決まる。


終わった後も、たがやが死なないバージョンもあるのだが
といいつつ、師匠の談志さんは、たがやの首を横一線に断つ
その描写の台詞回しのよさ、それをいいたいがために
死ぬバージョンしかしなかった云々と解説半分、思い出半分。


次が、夏の話という印象はないけれどさわりの部分で
それと知れて、小猿七之助
ご朱殿の解説に、はあ、なるほどと思うのだが
印象的なセリフ回しの導入部がややぼける。
(せりふ回しに絶大な自信のある談志さんが得意とした
 講釈ネタらしいのだが)

江戸落語だが鳴りものをふんだんに使う。
拍子木の音も小気味よく決まり、
2か所ほど談春さんの言葉が聞き取りところはあったものの
噺の風情は倍加し、音曲のはいる噺が好きな身としては嬉しい。
とはいえ。
それもやはり話芸一本で押してゆく緊張感のあるこの噺を
ちょっと違うものにしかけていたのも事実。
どちらが好きかといえば悩むところ。


やはり1時間半は長いなあ、と思い始めたのは
座席の作りが着物には辛い形と高さだったせいか。


中入時に腰をのばし、少し歩いてこわばりをほぐす。
後半は、会場のおしゃべりから「居残り」と知れて
はて、こちらも夏の話だったかしら、
それにどこかにネタだしされていたのかしらと。


居残りの解説をしかけて、少し文例をあげてみせる。
居残り勉強とはいうけれど、給食を食べきれないで残されるのを
居残りとはいわないですね、などなど。


この日の佐平治は、今まで見た談春さんの佐平治とは
かなり違う。
調子よく、たたみかけるようなところもあり、
堅気ではない恫喝めいた凄みも多少はあるのだが
圧倒的に明るくて軽みがある。
噺の間中、手をたたいて喜び、吹き出し続ける人続出。


さて、この佐平治は落語家の我がでるものらしいが。
終わったあとで、少しは自分も入っているといいつつ
師匠の談志の佐平治は悪党の中にまだ可愛らしさが覗いたが
自分のは100%、完全な悪党ですね、と。


このつきぬけたような佐平治、談春さん何をしたのかしら。
なにか、お金はかかるけれど、いつもの勝負事ではない
重くならない真剣にもならない
どうにも馬鹿馬鹿しい遊びでも誰かとしたのかしら。
それとも、そういう遊び仲間でもできたのかしら。



喉の調子は、かなり悪そうで
小猿の時から、声が枯れつぶれたような気配。
それなのにたっぷり3席、
こんなに手間も体力も気力も使う大ネタばかり。
それはもう、ファンは楽しみで満足ではあるにせよ。
息長く、落語家の黄金期といわれる50-60代を
ファンとともに歩いていくには、もう少し会を減らしてはいかが。
それとも単に夏風邪でも召されたのか。



いずれにせよ、喉はどうぞお大事に。