たそがれ清兵衛

いわずと知れた藤沢周平の時代小説をひとしきり読みふける。
日頃はぱっとしないさまざまな癖のある人物がでてくる。


その癖から侮られ軽んじられているのだが
隠された剣の腕によって期せずして事件に巻き込まれ、
からくも窮地を脱するのではあるが、
同時にそれまで出会わなかった人生の哀歓に遭遇する
そんな短篇連作集である。


それぞれに、その世間とずれた癖を貫くことからくる
当意即妙なあだ名がつけられており
それがまたその主人公の癖にぴったりなものなのではあるのだ。


人のあだ名は、
それがぴたりとはまるときほどあだ名としての面目躍如
とでもいうものがある。


人生の機微と機知にふれて
ほろりと、苦かったり悲しかったり、ふっと愛しかったりと。
ああ、こういう小説もいいなあと。