世界を変えた書物展

会期終了までわずか、ということで

冷たい雨の降る平日に、これだけを目当てに出かける。


美術館での巡回展だが、もともとは金沢工業大学のコレクションをもとにしており

さすがに開架式図書の棚に陳列はされていないだろうが

図書館の蔵書由来、ということなのか、豊富なコレクションだが

無料の展示、というのもそれらしい。


展示企画の考え方も、そうかこの手があったか

と思うようなもので、すべてコレクション「工学の曙文庫」から由来する。

そして展示方法もなかなか素敵である。

天井まで並ぶ薄暗い書棚にぎっしりと古い学術書が並ぶさまは

知の殿堂たる重厚な歴史ある図書館を思わせ、

このまま迷宮に迷いこみそうで幻惑される。

欧米にある、古書稀覯本のそろった歴史ある図書館といったところか。

ストラホフ修道院図書室というよりは、もう少し簡素なあたりも

工学の本が、さすがに学術書だったり報告書だったりすることから

本の装丁同様、質素でちょうど見合っているということだろう。


広島原爆投下後の米国調査団による報告書や

スペースシャトルチャレンジャーの事故報告書などもあり

光ばかりではない科学技術の発展をたどることができる。


それぞれの発見や思想を3次元で表す系統図や

1400年代からの図書の発行数を国別に地図にマッピングしたものなど

展示をじっくり見ているとそれなりに時間がかかる。

聖書文芸書と違い、装丁は一部、面白いものがありはしたが

内容が内容だけにそこまで凝ったものがなかったのは残念ではあるが。

(そして本の装丁はあくまでも愛好家の趣味なのだし)

図録がなかったのが残念だが、十分に堪能。

あらためて、じっくりと目録を眺めてみようと思う。