三谷幸喜の歌舞伎ときいてこれは行かねば、と。
気合を入れて見に行く。
当初は、漂流の後ロシア奥地に分け入る冒険談か、歌舞伎にするには・・
と思っていたのだが。
まずは背広姿の松也さんの解説に始まり
変化のない漂流船の様子は、さすがにもたつくものの
陸地に上陸した喜びもつかの間、最果ての極東の島での生活や
次次病に倒れる仲間たち、希望を失わずに帰国のつてを求めて
ロシア奥地へと旅する一行、と地味な展開の中に笑いや出来事を仕込み
(犬ぞりの犬たちの活躍や、異国の地でのラブアフェアなど)
やがては、ん? 宝塚か?というような皇女エカテリーナの登場となる。
なんとか帰国を許されたときにも、けがのために洗礼を受け帰国がかなわなくなった
船員の、まるで歌舞伎・俊寛のような愁嘆場(知人曰く)があり、と
ここまでの苦難の道のり故の想いが全開となり、飽きさせない。
歌舞伎に向かないと思われた作品でここまでもってくる
役者と脚本家の熱意に脱帽。
そして、どんなホン(脚本)でも自分たちのものにしてやるという
歌舞伎役者たちの貪欲さには、最も感銘をうける。
さてさて、伝統芸能ほど、同時代を受け入れる貪欲さには事欠かない。
そんな思いを胸にして、1階席は総立ちのスタンディングオベーションは
さて誰に対してか、と思いながら。
まずます満足の歌舞伎座をあとにする。