1ヶ月ほど前になるが、竹橋の近代美術館にて
大竹伸朗展を見る。
都現美の展覧会から16年ほどたっている、ということで
そんなになるのか、と。
あのときは「全景」というタイトル通り、すべての作品を総覧する内容。
作品数は膨大で図録の作成が遅れたのも当然ではないかと思ったものだ。
某コラムニストが入り口と出口で人数をカウントしないと
会場内で行き倒れている人がいるのでは、といっていたのが
的確すぎて笑ってしまったことを思い出す。
今回も、作品数はそこまで多くはないものの過去の秀作が総覧できる内容で
行きつ戻りつしながら、あっという間に2時間近くがすぎる。
会場ではNHKの8Kで放送された作品制作のドキュメントをやっていたが
会場の通路脇に場所に丸椅子が少し並んでいるだけで、
しかも上演時間が1時間以上。
すっかり疲れていた身には立ち見はつらく、全部見れないまま会場をあとにした。
知り合いから、DVDに落として送ろうか、などといわれていたのだが
NHKのBSでようやく先日放送があり、じっくり見る。
80年代、新時代の旗手のようにもてはやされていたにもかかわらず
経済的には長く全くの不遇だったことなどを知る。
2000年代半ばからだったか、と思い至る。
現代美術の今の隆盛に上書きされてしまっていたが、
そういえば90年代に入っても、現代美術は数少ない人たちの関心しか
集めておらず、昨今のブームは、世界的な金余りの中で
美術作品も投資の対象になった、ということでもあり。
宇和島に行ってから、大竹氏の作品がまた新たな展開をみせたことは
興味深く拝見していた。
地理的な異文化(ロンドンやナイロビのゴミに触発された初期の作品)
だけでなく、時間的な異文化(過去=昭和の遺品である宇和島のゴミを
重要なモチーフにした作品)などによっても、この人の作品はできあがるようで
そこに網膜シリーズのような新たな手法が組み合わさっていく。
そんなことが新作制作のドキュメンタリーでうかがい知れる。
今回の展覧会では新作はこの作品のみで
過去作品を集めた特装本や、ちょっとしたガジェットのはいった
限定部数の画集などが近作とし出品されていたが
平面作品などはなかったように思う。
(なにしろ、出品目録もQRコードで見るのみであとから見返すことが
できなかった。なにかやりようはあるのだろうが)
最近は作品を作っていないのか、近作は海外で売れてしまったのか
などと考えていたが、あの制作方法をみるとそうそう作品をつくれない
ということもよくわかる。
そこからするとむしろ、20-30代の制作ペースがすさまじかった
ということなのかもしれない。
愚直に妥協なく、自分の目指すところを突き進んできた。
80年代にはじめて作品を見た衝撃と、その後の作品の変遷と
それをもう一度じっくり見ることができた。
なんだか圧倒される。当時と変わらずに。