志の輔さんの新作落語「大河への道」が映画化されたので見に行く。
面白く拝見した。
伊能忠敬の死後、地図を完成させようとして奮闘した測量隊(伊能隊)の面々と
それをなんとかかなえようとした天文方・高橋景保など、
あまり知られていない市井の人たちの決意や覚悟に焦点を当てているが
落語が原作だけあり、コメディタッチで気軽に見られる。
失われゆく時代劇の手法をなんとか残したいと新しい時代劇を模索していた
中井貴一氏が、志の輔さんの高座を見てぜひにということから始まった企画とのこと。
それらのエピソードを知らなくとも、よくできた映画ではある。
現代と過去を行き来しながら、人物がそれらしくダブルキャストになるなど
の仕掛けもあり、女優陣の今風の着物や帯結びもちょっとした楽しみでもある。
気になったのは、何番目かの伊能の内縁の妻、栄だろうか。
当時の女性としては珍しく漢籍を学んだ女性で手蹟も立派、
地図作成の折には尽力したという。
この時代にしては自由に生きた才媛だろうが、映画版は少し粋な風情で
女だてらに学問をした、という点が伝わったのかどうか。
とはいえ、笑いあり涙ありと十分に堪能した。
小説化もされ漫画版も出ていてメディアミックスの様相。
とはいえ、伊能忠敬の出てこない(亡くなったシーンから始まり、役者さんもあてていない)ドラマ、というトリッキーなつくり。
きっと今回の作品とはまるで別物になるに違いない。
大河ドラマへの道は、まだ遠いな、とひっそりと笑いながら考えている。