小三治さんの訃報を聞き、しばらく茫然とする。
ついこの間の高座で拝見したばかりで、もしやあれが最後の高座だったのかと。
訃報の続報を読むと、直前まで体調はよかった様子。
全くの急死だったようでますます惜しまれる。あらためて合掌。
平日の昼間、時間指定だがかなり混んでいる。
会場には中学生時代の油絵から、高校の美術部での8ミリフィルムなど
当時からこの人物がもっていた関心や才覚の片鱗がわかるようである。
本人が素顔で出演するウルトラマンの戦闘シーンのみの短編映画は2本ある。
1本目は大学のCM制作の課題に合わせて作成したCMの「本編の番組」で
怪獣役も素顔のまま出演している。
もっと後に、ミニチュアセットを作って本格的に作った作品は怪獣は着ぐるみだが
こちらも庵野のウルトラマンは素顔のままでそれらしい上着だけが衣装である。
これも道理なのだが、低予算の作品ほど、作りたかったものの本質や、
大事にするものが何かがよくわかる、ということか。
会場は庵野が影響を受けたもの(過去)、アマチュア時代から現在まで(現在)、
未来への継承=アーカイブ(未来)という3部構成になっている。
特撮の技術を記録し残していくためにとまずは企画された
2012年の東京都現代美術館での「館長 庵野秀明 特撮博物館」は
多くの来場者を記録し、東宝の特撮映画「シン・ゴジラ」(2016)や
非営利のアニメ特撮アーカイブ機構の設立などにつなった、ということのようだ。
一時期アニメーションからはなれて実写映画を撮影する中で
「シン・ゴジラ」が生まれ、「シン・ウルトラマン」、「シン・仮面ライダー」
(いずれも公開はこれから)につながり
「シン・エヴァンゲリオン」では、街全体のミニチュアセットを作成し
そこで様々なアングルで景色を撮影してアニメーションの構図を作成するなど
実写とアニメとの技法の融合などがよくわかる構成である。
ちょうど今、佐藤優と片山杜秀の「平成史」(2018)を読んでおり
第2期のエヴァンゲリオンシリーズ(2007~2021)まで、
(監督の年からするとまあ当然なのだが)平成の時代とほぼかぶっているのかと
そんなことを考えていた。
「シン・ゴジラ」では日本の官邸などを徹底して取材し
リアリティのある描写でも話題となったが(何回も映画を見る若手官僚がいたとか)
ポスターのコピーは「現実(ニッポン) VS 虚構(ゴジラ)」で
それぞれカッコ内のルビが振られている。このコピーも秀逸だ。
平成の時代に、ネットというアンダーグラウンドは表舞台に踊りでる。
宇野常寛のいうようにサブカルチャーの多くがメインストリームのものと融合し
ある種、虚構といわれてきたものが、東日本大震災や地下鉄サリン事件などの
大規模な厄災を契機に、平らかな日常に突然ふっと紛れ込んでくる、
平成はそんな時代だったように思う。
平成を総括する本は令和の初頭に多く出ているが
この機会にそのいくつかをゆっくり読んでみようと思っている。