吉例柳家一門会

お目当ては小三治さん。

NHKのドキュメンタリーで拝見すると

80歳をこえて体力的にはなかなか厳しそうではあるが。

 

 

小はぜ:狸鯉

三之助:替り目

小里ん:五人廻し

仲入り

小三治:猫の皿

 

 

今回はずいぶんと長かった緊急事態宣言が開けて最初の週末。

酒のみには待ちに待った解禁日。

公演前に軽くお腹に入れにはいった店でも

嬉しそうにボトルワインを一人で開けている人の姿も。

三之助さんは酒にちなんだ話を。

 

 

仲入り時に外を見ると、晴れて暑かった昼間が嘘のような雷雨。

かなり降っているが、当然傘の持ち合わせがない。

周囲のお客さんも、終わるまでに止むかね、などと

劇場のかかりの人に話しかけている。

休憩後、時間が押す。

開演ベルが鳴ってからもなかなか緞帳があがらず。

もしや急な体調不良なのでは、とやきもきしていると

緞帳が上がり、高座に板付きで椅子に座った御大登場。

 

 

膝前を隠すように(正座しているように見えるように)

こんもりと何かが積んである。

この位置決めやら何やらで苦労していたものとみえる。

 

 

独特の間合いのとぼけた味わいの枕が始まる。

芸風もあり、言葉を思いだせないことすら独特の間合になって笑いが起きる。

この日のパンフレットの解説に落語家が趣味でやっている俳諧の話があり

米朝さんの俳号が八十八(米の字をもじって。気障なんですよ、と)

その名前を米朝最後の直弟子が真打に上がる際、名前にもらった話しやら

会場近くに住む古い知り合いが刀剣好きなこと

自分もいく振りか刀剣を持っている話、などから「猫の皿」へ。

 

 

噺にはいると、時折少し咳き込みはするが

言葉には自然な強さがある。

一門会を地方含めてあちこちでされるには、少々心配ではあるが

もうしばらくは楽しませてもらえそうで。

終演後はすっかり雨が上がり、雷様もどちらかへ去り。

湿った雨のにおいとともに冷えてきた夜半を家に向かって急ぐ。

枝雀さんがなくなった折、小三治さんが「あっ、逃げやがった」と

思ったというような話をどこかで聞いたけれど。

 

 

衰えていく身体とともに、高座に上がり続けるのは

壮年期の「自分の落語をどうするか」という苦しみとはまた別種のものに

なるのかもしれず。

 

 

味わいが変わる。

ご本人の大変さを置いて置けば。

芸というものは残酷で、また面白い。