立川志の輔一門会

府中にて、志の輔さんの一門会。

会場にはいってすぐ、目につく場所に

「会場は発売日の都合で(3月末に解除された緊急事態宣言後に発売)

一席空けになっていないが、ご了承を」と注意書きがある。

 

 

この日は一門会だが、昨年の4月に真打昇進をしたものの

コロナで通常のお披露目のできていない、三番弟子の志の春さんの

披露も兼ねており、中入り後に簡単な口上がある。

どうせなら志の春さんの一席のある回を選びたかったのだが

お客さんもよくわかっているのか早々に完売。

夜公演は時節柄もあり、諸事情を鑑みてこの日の昼公演となる。

 

 

ホールの30周年記念の自主公演でもあるため

一門からのお祝いの色紙も展示してある。

ステージ上にも、麻の葉文様をアレンジした背景があり

常とは異なり、そこはかとなく華やいでいる。

」と染め抜かれた揃いの法被姿のスタッフも

落語会らしい雰囲気。

 

 

 

志の大:黄金の大黒

志の彦:片棒

晴の輔:猿後家

仲入り

志の輔、志の春:立川志の春真打披露口上

志の輔:千両みかん

 

 

志の大さんは何回か聞いている。

話自体はよいが、まだまだ余裕がない、といったところ。

志の彦さん、元気いっぱいにはじけた「片棒」。

晴れの輔さんも持ち味の明るさ全開でマクラから飛ばしまくり

テンションが高いまま「猿後家」。

 

 

 

口上では、入門後から話題になった高学歴弟子の走りだったこと

三井物産を辞めての入門、

師匠の海外ツアーに連れていくと当地の物産の社員が楽屋に顔を出す、

という話など、弟子の横顔の知れるコンパクトで過不足のないもの。

志の春さんの、外人(と英語に関心の高い日本人)向け英語落語を

聞いたことがあるが、帰国子女の流暢な英語ではなく

日本人や英語にさほど堪能でない人にも優しい

(ざっくりとして聞き取りやすく、ごく簡単な単語ばかりの)

典型的な商社マンのような英語で、

マクラには落語という芸能がどういうものかのガイダンスも軽くはいった

よくできたものだった。

 

 

口上は本来は師匠筋からだけで当人は顔もあげないものなのだが

と前置きをして、今日は当人の一席がないので特例で一言挨拶をと

志の輔さんがふってみせる。

師匠からの遠慮のないちょっとした小言めいたやりとりのあと

ごく常識的な挨拶があり、三本締め。

金屏風と緋毛氈、折り目正しく紋付き袴。

シンプルに師弟二人のみが舞台上で頭を下げる。

 

 

口上の終わった後は舞台転換をして、志の輔さんの千両みかん。

こちらも常と同じくよい出来、府中まで足を延ばした甲斐あり。

帰り道、乗換駅のターミナルで街中を少し歩く。

宣言中で開いていない店や撤退した店もあり、しばらく来ていない間に

随分と様変わりしている。

コロナのせいで多くの店が閉店し、ワクチン接種が進んでも

もう元にはおいそれとは戻らないこともあるのだろう。

常と変わらず、好きなものにふれることのありがたさ。

めずらしく殊勝に考えてみる。