紀伊國屋ホールにて

コロナがおさまらず。

影響は2024年まで続くという報告を半年以上前に見た時は

そこまでは、と思ったものだったが。

 

 

首都圏に2度目の緊急事態宣言が出るか出ないかという頃に

既存の公演はそのままやってよいという国の方針のもと

払戻しもなにもなく公演は予定通り、といわれて

おそるおそる新宿に出かける。

なにしろ都心を歩くこと自体が数カ月ぶり。

 

 

紀伊国屋ホールは、もう30年以上前にいったくらいか。

大型扇風機が回り、ロビーでは飲料以外は禁止の様子。

こうしてみるとトイレも狭く入り口に段差がある(水があふれた時のために)。

椅子は取り替えたのかまだ新しい気がするが

客席は100%販売で最前列こそ売り止めだが、他はほぼ満席。

寄席の客がほとんどいない、という中(当日券のみだからか)、

ここだけ別世界ではと演者が語る中、粛々と会が進む。

 

 

演者の年齢では、入門したころは客が薄く高座も少なく

仕事がないこと自体に耐性があるが、今の若手は違う。

入門当時から落語ブームで、しょっちゅう口がかかるのが当然という世代。

コロナ下で仕事がないことですっかり参っている、という話など。

 

 

こはる:子ほめ

談春:よかちょろ

三三:素人うなぎ

中入

談春:ねずみ

 

 

こはるさんは1年間活動停止をしていた、とのこと。

しばらくぶり、なのかあまりよろしくない。

最初に権助、ではじめていたが途中から子ほめに変更。

次に上がった談春さん。

フォローするように、楽屋で三三さんと「押しどころが違う」などと

散々突っ込みを入れていた、などと。

よかちょろ。話芸だけでもっていく噺だが、こちらも勢いが今一つ。

 

 

三三さん。

高座に上がる前から談春さんにネタ選びでぎゅうぎゅういわれ

やりにくかろうと思っていたがさすがの「素人うなぎ」。

ネタ選び含めて、熱演に万雷の拍手。

中入り後は談春さんの「ねずみ」。こちらもトリにふさわしく大変結構な出来。

 

 

今回の紀伊国屋の会は9回公演で、各回ゲストも演目も異なる。

(ゲストと若手の演目は当日のお楽しみ)

諸々都合もあるにはあるが、久々に聞こうと思っていた花緑さんの回は

出されたネタからするとなんとなく予定調和になりそうで。

そこからするとこの会で正解か、と。

「ねずみ」の、虎を彫った彫り師の心根が虎の目元の曇りにでて

それが作品を最後の最後で駄目にするという話は

なんだか心にすとんと落ちてきた。

諸事情あろうが、それはそれ。作品に向かったらただもう一心にすべてを注ぐ、と。

 

 

新年らしく、最後は三本締め。

気持ちに余裕がなくなり、気鬱ばかりが募るこの頃に僥倖のような時間だった。

足元をちゃんと見て、少しだけ時間に余裕をもたせて

できることを淡々と丁寧に。

まだしばらく続くコロナの下で。なんとか気持ちを保って。