ヤモリ、カエル、シジミチョウ
子供の視点が独特で、童話作家でもある作者の
渾身の1冊、的な書評だったが
そういう部分もあり、それほどでもない部分もあり。
ひらがなだけの、子供の視点から描く世界は
新鮮ではあるが、ある種、ありがちなところもあって
ただ、読みずらいのはちょっとなあ。
7つまでは神のうち、というように
子供というのは大きな意味でこの世と未分化なところがあって
そういう、まだ人間になりきれていない
人間社会のほうを向き切っていない子供の世界・視点が
ありありと見えるのは確かにいいかな。
でも、あんまりワイルドじゃないなあ、という印象も。
何と比べて、といったら、児童文学好きなら
思い浮かぶだろうけれど。
霊園に勤めながら死者に向かって話しかけることが
習い性になってしまった男も、こういう人を知っているからか
なんだかすんなりと自然に感じられる。
話せるのに、聞こえない、という拓人の言い方も
ああ、彼からすればそのとおりだけれど、と。
この中にでてくる登場人物の中で面白いとか共感できるとか
感じたのはこの2人。
それもどうだろう、などと。
圧倒的なものを優しい筆致で書いている。
という点ではなかなか面白い本だった。