専門図書館めぐり

武蔵野の近隣の個性的な図書館を巡るツアーに参加。
11月に入って急に肌寒い初日の平日。迷った末に、少々厚手の上着を来ていく。
案内役が点呼の後、2人一組になり、まずは自己紹介から。
「昨日はなにしてました?」ひとしきり和んだところで出発。

武蔵野プレイス。
図書館機能に生涯学習支援、青少年活動支援(キャリアカウンセリング含む)、
市民活動支援を交えた複合施設。
同じ建物に縦割りに機能が同居しているのではなく、
1団体がすべてを運営・フロアも混成とあきらかに狙いがある様子。
コンセプトの新しさは抽象的だが、
それを表現する建物全体の曲面をイメージしたデザインの斬新さとレトロ感が
“柔らかい感じの良さ”を醸し出す。
子供の本のエリアには、童話にちなんだキャラクターのぬいぐるみが
そこここの棚から顔を出し、読み聞かせコーナーには大型絵本。
600をこす雑誌タイトルや、生活関連図書の充実
(日本酒やシャンパン、酒の肴の本が並ぶコーナーなど)も特徴。
総じて設備も備品も目配りが効いており、
勘どころのいい人たちが議論を尽くして棚をつくったのだと思える。


複合的な施設でかつ、それらの領域の有機的な融合や化学反応を目的とする、
と字面で言うとたやすいがその効果測定や評価の尺度はどう考えるか、に尽きる。
とはいえ。1日5千人の来館者数と、視察の多さ、
かつ視察した多くの人が「羨ましい」と感じるコンセプトや設計、着眼点の良さは、
すでにこの施設のまずまずの成功を示している。
「自分の地元に欲しい、使いたい」というのが率直な感想。


ICU国際基督教大学)図書館
キャンパスが広大で緑が多く実に恵まれた環境。
滑走路とも呼ばれる正面ゲートから建物群までの直線の道は、
ここが旧中島飛行機の敷地だったことから来る名残で、
その昔はゴルフ場と農場も併設だったとか。
ああ母校を思い出す、歴史の古さでは負けるけれど。
ここの図書館は、ラーニングコモンズ(学生の学習スペース)と
自走式書庫が売りという。
ラーニングコモンズ、ん?と思っていたら
要するに学生の学習スペースらしい。
ぶち抜きのワンフロアに、1階は自習用にパーティションで仕切った個人机を、
2階はグループ学習用に机を組み、
さらに英文ライティングのサポートコーナーもあるとか。
そして自走式書庫は日本の大学で初の導入だったこともあり、
見学用のスペースから実に快適に見学。
自走するコンテナと本がタグつけられるので空いているスペースに本を戻せると聞き、
原理を知ってはいても感動する。
図書館の新館にはオスマー図書館と寄付者の名前がついており、
いかにもミッション系の、寄付で成り立つ大学風の由緒正しさがただよう。
和書と洋書を同じ棚にジャンル別に並べる開架は、
利用者がバイリンガルだからね、と納得。
一画に日英の絵本コーナーがあり好評なんだとか。
語学の習い始めは絵本がいいということか。



国立天文台図書館
天文台、と聞いただけでちょっとわくわく。
こじんまりした専門図書室は9割が洋書、ほぼ天文学の専門書が占め、
一部に数学と物理、子供向けの解説本など。
あまりに偏った本しかないため独自分類を使用とのこと。
図書室をでてからせっかくなので、と見学者用のコースを堪能。
天文台ですからね、巨大な望遠鏡をふくめて見どころは多い。
今年はこれからまた彗星が見られるとのこと。
ここも広大な敷地のため歩き疲れ、日が落ちて寒くなったこともあり、
ツアーの同行者も口数が少ない。



星と森と絵本の家
同じ敷地内にある、天文台の職員用の官舎(大正時代の木造の平屋建て)を移築し、
森と星と絵本をテーマにした子ども用の施設へ。
田舎の祖父母の家に来たようなほっこり和む空間。
靴を脱いで家に入ると、古い食器棚やら壁に仕込まれた絵本や仕掛けのかずかずに
大人も歓声。疲れ気味だった参加者もみな夢中になってあれこれと試してみている。
広い庭には柿やびわが茂り、ハンモックに井戸、
木工コーナーまであって30円から木工が楽しめる。
1日の最後にここにきたのは幸せだなあ、とすっかり参加者もいい表情。


個性的な図書館をめぐり、本好きにはうれしい大収穫の一日。
武蔵野の夕暮れの中家路につく。