有名建築家の作った私邸

ずいぶん前からチェックしていたが

迷っているうちに1年後に八王子に巡回するからと

先送りにしていた「戦後日本住宅伝説」展に

ようやくいってくる。


並びをみればそうそうたる建築家だが

多くはまだ若いころに、私邸とはいえかなりの力を込めて

自分の建築観や哲学のありったけをかけて

個人のための小さな邸宅を作っている。


今見れば奇抜でもあり、

あるいは、説明されればもっともな合理性や

風土との兼ね合いを有しているともいえるのだが

当時としてはやはり相当先鋭的なものだったのだろう。

両親のために建てたにもかかわらず

居住を拒否されて自分が住まうことにした

という邸宅もあるし、住まうことで形を変え

家族の歴史、訪れる人たちによって使い勝手よく

帰られてきた家もある。


数代のオーナーによって受け継がれ

今もその庭の藤棚の満開のおりには

歴代オーナーとそのゆかりの人たちが集まり

花見のうたげをする、という幸せな家もある。


もっとも近年の作品は、伊藤豊雄が妹とその娘たちのために

建てた私邸だろう。

夫を亡くし、うちにこもった悲嘆のなかで

外から閉ざされた邸宅は、子供たちが育ったのち

あまりにも私的な思い出と目的のためのものだったことから

他人の住まいとして転売されることに家族が反対して

取り壊されたという。


私的であり、かつ私的ともいいきれない不思議なもの。

見学ツアーがあったことを会場で知り

ほぞをかんだ。

次の機会があれば、ぜひ訪れてみたい

と思わせる、ある種不思議な邸宅たちだった。