立川春吾 ゲスト吉笑 落語会 

 

噺家が闇夜でコソコソ」という深夜番組出演の2人がでる

というより「春吾・吉笑の楽屋噺」の2人が出るというので

楽しみに新宿シアターミラクルに出かける。

会場名をとって「みらくる★春吾」という会らしいのだが

本人も言っている通り、会の名前としては

およそ内容のわからない困ったネーミング。


西武線新宿駅のすぐそばの雑居ビルの上という猥雑な雰囲気の界隈、

およそ落語会という雰囲気のない小屋なのだが、

お笑いのライブなどがよくある様子。

照明設備からすると芝居もできるようで、

師匠譲りなのか客席の照明を完全に落として

高座だけが煌煌と明るい。


落語会には珍しい、客席の見えない明かりの作り方で

ゲストの吉笑さんはアイドリングに時間がかかる。


春吾:あくび指南

春吾:新作(クロコダイルとヒポポタマス~爆弾~)

吉笑:新作(ぞおん)

春吾:新作(海のはしご)

春吾、吉笑:トーク


最初の一席だけが古典、あとは新作ばかりという会になったが

いやあ、面白かった。


春吾さんの「クロコダイルと・・・」は不条理な会話劇で、

ふんだんな笑いを入れて不条理コントのよう。

吉笑さんの「ぞおん」(表記がこうなのか自信がないが)は

プロスポーツ選手などが、俗に「ゾーンに入る」という様子

(異常な集中の結果、周りの景色が消えてボールだけが見えるなどの現象)を

説明して、それを古典落語の番頭さんの事務処理能力がゾーンにはいったら・・・

という設定に置き換えての新作。

音の遊びをちりばめて、これが不思議に落語の体をなしていて

かつ、とても楽しいものになっている。


ノリノリの吉笑さんが時間をオーバーしてしまったとかで

春吾さん、時間(尺)を考えて語り始めたのが「海のはしご」。

孫と祖父、若い男女の会話の楽しさや微妙な雰囲気という話芸でのみ

表現できる技術を駆使し、かつ硬質で張り詰めた静かな童話のような

ファンタジックな余韻がある。

おやおや、こういうものが作りたい人だったのか、とちょっと見直してみる。


最後は、時間も押しているので、といいながら2人のトーク。

どういう視点から新作をつくるのか、という話やら

吉笑さんの、師匠に似た癖を指摘しながら

お客さんからすると「あそこ、師匠に似ている」などというのも

楽しみの一つなのかもなどと、春吾さんは妙に大人の風情。


ちなみに、談春師匠とその弟子筋のよく似たところは

姿勢よく座って膝に置く、その手が、親指を伸ばして握られて

かつ左右が少しずれて置かれること、と思うのだがいかがだろう。


談笑さんと吉笑さんは、襟元をさわりながら、膝前に両手をついて

前かがみになり、話題を変える、など、言われてみればあるあるネタ

面白くもある。


先の楽しみな2人の落語会が終わり、そういえば感想のアンケートを

書かなかったか、と思いながら

飛ぶようにいかがわしい界隈をあとにする。

どうやらまた一つ、落語の楽しみが増えてしまって。


当分落語会通いがとまらない。