機巧のイヴ

小説新潮の読みきり特集で見つけた短編がどうやら
(読み切りと云いながらも)
ゆるやかな続きものであるらしいと知り
バックナンバーを見つけて読み終わる。

 

ブレードランナーの中に出てくる強力わかもとみたいな違和感を
 もつものを書きたい」
という作者の構想らしきものもあるが
タイトルからして、それらしいアンドロイドの話であり
SF的で哲学的なものを内包しているらしいことが
暗示される。


箱の中のヘラクレス・・・これはわかりやすい。
京極夏彦の「魍魎の箱」の先例もあるが
さほど箱自体を描きこんではいない。
続編がさらに続くのなら、何事か外伝があってもいいのかもしれない。


神代のテセウス・・・・テセウスのパラドクスへの言及。
からだのパーツを置き換えていったら、どこからか別人になるのか
という素朴な疑問はあれど、魂や精神というものが
独自と言われているなら、もはや・・。


制外のジェペット・・・・からくり人形の生みの親としたら、西欧では

ゼペット爺さんということになろうか。
アンドロイドではなく、からくり人形として江戸期のような背景設定に
したあたりに、このシリーズの奇妙なリアリティがある。


歯車の奥のプシュケー・・・・ブレードランナー同様に
「アンドロイドは電気羊は夢をみるか?」はすでに古典の領域。


哲学的な思索を呼び覚ましたかといったら
答えは否、となろうが。
面白い世界観だった。できれば続きが読みたい。