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スティーブン・キングの新作

「11/22/63」は過去にタイムトラベルし、

歴史の転換点たる過去を変えようとする話だった。


何度も過去と行き来ができることから

「All You need is die」に似ているのかとは思ったが

どうもそうではなく、また亡命者のような生活になるはずの

主人公の「過去」での生活は、恋や友情、仕事、そこで認められること

といった今の時代にだって下手したら手に入らないものすら入手できる

あまりにもまともな、喜びに満ちた生活であり

なんだかアンフェアだ、と思うこともひとしきり。


モダンホラーの大衆作家から出発し

いまなおその立場を変えてはいない作家ではあるが

純文学の大家にも作品のよさと深度は引けを取らない。

冒険と成熟と、センチメントにあふれた人生の機微

現代人の心に潜む闇を手を替え、書きつづけてきた作家が

ここにきて、もっと人間の暮らしが人間らしかった近過去を

郷愁とともに描くことが増えてきたのは偶然ではあるまい。


その時代になく、今の時代にあるもの。

今になく、その時代にはあり、ようするに失われたもの。

それとこれとの間、その違いを考えるときに

しみじみとした哀歓とともに、変わらぬものもまた心に迫ってくる。


どれほど言葉を尽くされても届かなかった

ある人の想い。

それが不意に(もちろんその時からそこにあったのだが)蘇ってきて、

まるでその人からの何年か前に仕掛けられたプレゼントのように。

ディスクレシア、ではなくて・・・

心に落ちた、そして私には、することがある。