談志さんの評伝を

  雑誌「文芸」の別冊のムック本「立川談志」の巻頭に

−−巻頭と思っていたら、2番目だったのだが−−

松本尚久氏の文章があり、

追悼本にありがちの雰囲気(礼賛一色の)に水を差す抑えた筆致に

妙にひやっとした。


詳細はこちらを参照されたい、と簡潔にふれられている書籍が手元になく

ノートをあたって、「en Taxi」連載当時の文章からの抜き書きしたメモをたぐった。


その段階で、クールさのうしろにある文章と想いにまでたどりついて

ああそうだった、と少し気持ちが落ち着く。

元の文章を参照しなければ、随分突き放した冷たい書き方に見えたから。


談志さんの死後、依頼された原稿をほとんど断ってきたという文章にも、

あらためて血肉が通い出したようにみえる。

確かに、この時の文章で、その後の立川談志は暗示されていたともいえ

短い断章のように、立川談志とのごく私的なかかわりと思い出が

情愛のにじむおさえた筆致で書かれていて胸を打った。

短く、極私的な、これは談志さんの評伝だった、早すぎたきらいのある。


この人には、もっと時間を置いて、あるいは時間をかけて

もう少ししっかりと長い評伝を書いてもらいたい、

それをぜひ読んでみたい、あらためて思う。

それは私の仕事ですか? と聞き返されることがあれば。

ええもちろん、と。

答えてみる。きっと。