卒業写真

友人のバンドがライブハウスに出演するというので聞きに行く。

ジャズ系のライブハウスらしいのだが。

ユーミンの曲を歌った後で、この曲の「あなた」は恋人ではなく

歌い手(荒井由実)の高校の美術の先生なんですってね

というMCが入る。

 

 

あなたは、私の青春そのもの

といえるような師に出会えたならとても幸せ。

 

 

ときどき遠くで叱って、という詞が優しい。

大人になると叱ってくれる人がいなくなるから。

 

 

趣味といいながら、どのバンドもしっとり聞かせるさまに驚きつつ

羨ましくなる。

感情を載せられる表現を持つのはなんであれ素敵なことね、と。

 

 

 

 

安藤忠雄展と光の協会

 安藤忠雄展を見に行く。

前売り券を早々と購入し、実物大の光の協会を目当てに。


しかし・・

激混みの会場の中、この人作品が多かった・・と思いだす。

作品集も数多く出版されているが何しろ精力的に仕事をしている。

それを総攬するのだから見る方も気合が必要ということか。


光の協会は、実物の倍、お金をかけて仮設で実寸大で作り

安藤事務所の持ちだしだという。

そういう金の使い方はいいな、生きた使い方だから。


この人のカード代わりの、スチールボードなんかで作る立体の絵手紙風の

グリーティングカードも味がある。

もらったほうはびっくりするだろうし、記憶に残る。

(とっておくのはかさばるけれど)


過剰でまっすぐでぶれずに。

異端といっていい経歴だが、そこを突き抜けて

大家となった。

かっこいい大人、好き嫌いは別として。


それにしても安藤ファン、こんなにいるのかしらん。

英語で落語

地元で時折、2つ目を使った気軽な落語会があるが

今回は英語落語ヴァージョン。

演者はイェール大卒で話題の立川志の春。

 

英語落語というといくつかやり方があるようだ。

一つは一之輔欧州公演の時のように、演者は普通に日本語で演じ

そこに現地語(英語とは会議らない)の字幕がつく。

この方式は、字幕の出るタイミングに合わせなければ笑いがずれるため

一度決めたテンポが買えられず、アドリブも不可という点が欠点といえば欠点。

もう一つは、英語に訳す作者がおり、その英語を落語家が暗記して高座にかけるもの。

国際交流のプロジェクトなどで、いわゆる英語の先生などが

簡単な落語高座、落語の特徴などちょっとした聞く際のコツの解説がある。

欠点といえば、ある程度演者が慣れないと聞きずらい、とかアドリブなどの

観客や客席の雰囲気との当意即妙なやり取りはこちらも期待できないこと。

そして最後。英会話落語口演の双方に素養のある演者による口演。

今回がそうだが、もっとも自然なものだと推察するが、演者を選ぶだろう。

 

志の春:転失気

志の春:(小咄ヴァージョン)寿限無

志の春:動物園

 

解説に始まりほぼ全編が英語。

もちろん、様子を見ながら日本語を交えはするが

絵が終了したあとのちょっとした質疑応答コーナーでも、

日本人の質問も英語だったところからすると

英語を話すこと自体に興味がある日本人と日本在住の外国人が客層。

英語の興味から来ていたようで

(お辞儀のあとに拍手がなかったことからも)

落語ファンはほとんどいなかったようだ。

 

落語自体もともとが大衆的な芸能であるせいか、平易な英語である。

簡単な単語しか使わず、発音ネイティブっぽくなく非英語圏の人間にきわめて優しい。

粗筋を聞いていれば中学生でもついてこれるだろうか。

はじめこそ、ごく簡単な説明落語家ナレーターではなく、すべての登場人物を

一人で演じること)と演じ分けの実演(学校から戻った子供を、父親が出迎える、

母親が出迎える、祖父が出迎える、祖父が出迎えるという寸劇)、小道具の説明

のあとはマクラ代わりの森元首相クリントン大統領の有名なエピソードを小咄がわりにして、

そのまま転失気へ。

 

転失気を酒とするのは英語ならではだろう。

(日本語では転失気が「あったか」と問うがここではhaveを使ったため

 摂取したか、ともとれる)

とかなんとか、そんなことを考える程度には聞き取れる。

 

会場からの質問も

あなたの英語のバックグラウンドは? とか

英語での話はどのくらいある(持ちネタはいくつ)か?

などなかなか鋭い。

 

通常の落語会とは異なるものの演者は達者で危なげもなく。

転失気のような落語が案外英語になじむのかと発見もあり。

気楽な落語会、はかわらずで、外人向けの落語会、ありかもね、と。

有楽町朝日ホールで

久々に贔屓の独演会。

平日5時開始という半端な設定の日だから取りやすいかと踏んで。


マクラによると、どうやらいつもチケット争奪戦に敗れてあぶれる

古馴染みの年配客が今回は多かったようで。

年齢層も高く、男性がほとんどだった、とのこと。

その中で、3日目、開演時間がはやいこの日のほうが

女性が多く年齢層も若めというのも、いかにも不思議、と。


三軒長屋は好きな演目。

談志譲りの伝法な切っ先鋭い語り口が好きで

また聞かせてもらえると楽しみに出かける。

とはいえ、これを演るには体力が相当いるはずだから・・

さて、どうするのかしらん、などとも。


談春:棒鱈

談春:三軒長屋(上)

中入り

談春:三軒長屋(下)


上下に分けて中入りをはさむ。

語り口もいつになく丁寧で、大店の質屋の隠居がはまる歳になってきた。

ぽんぽんと鋭く切り込むような語りはないが演じ分けも確かで

話のはこびもいい。

マクラでは、そろそろ家元の7回忌だとか、

自分が2つ目に昇進した時の会場だとか、さりげなく時の流れを感じさせる。


縁側に腰かけて、色気の抜けた同士でお茶でも飲んで昔話をするような

そんな風情も漂わせ(会場に誰かいたのかな?)。


これはこれで。

なかなか素敵な会。

関内寄席 若手編

台風が近づいているが午前中はなんとか降らず。
広瀬和生プロデュースのネタだしの会。


わん丈:寄合い酒
吉笑:カレンダー(新作)
中入り
ぴっかり:元禄女太陽伝(作者ありの新作)
小痴楽:宿屋の仇討


男性陣はみな達者なもの。
最近は2つ目の会も増え、場数を踏んでいるせいか
ぐんぐんうまくなる。
たいしてぴっかりさん。
女性が廓話をやるとちょっと・・という部分が見えて
残念な印象。からっとやってはいるのだが。


次回はわん丈、ぴっかりにかわり、粋歌、こはるとのこと。
女流は、そのあたりよくわかっているこちらに期待。

花緑、喬太郎、一之輔と

「柳の家の三人会」ならぬ「柳の家に春風が」のシリーズ。

要するに当代の人気者を集めた会なのだが。

三者三様というべきか。

前座の緑助さんのあと、客席を温めようと下ネタ(風)のマクラではじめ

池袋なら食いついてくるのに町田はざあっと引きましたねと笑わせる喬太郎さん。

 

一之輔さんは、柳家から(柳亭市馬さんふくめ、三三さんなどが入れ替わり)3人

そろわない時だけ、私に声がかかるといい、思いつきのようにはじめた

時事ネタ松山千春の物まねが案外受けて、

談志さんの物まねをしたのだが毒舌ぶりが同じで案外似ている。

 

花緑さんは、喬太郎さんと一之輔さんでさんざん笑い疲れたお客さんの前に

トリで高座に上がる身にもなって欲しいと言って笑わせる。


 

緑助:たらちめ

喬太郎:夢の酒

中入り

一之輔:鮑のし

花緑:紺屋高尾


喬太郎さん、おちついた風で夢の酒をはじめ

随所でテンション高く思わせぶりにひっぱり笑わせる。

笑いを取るのにも、この安定感。


一之輔さん、

大家さんを甚平さん(与太郎キャラ)がこんちわと尋ねると

速攻「帰れ」といわれるまさかでドライな展開で飛ばす。

ひきつった男性の高笑いと男性が耐え切れず吹きだす音が充満する

男殺しの爆笑の鮑のし


そのあとで高座にあがり、

「いくら持ちネタだからって寿限無をやるわけにもいかないし」

「みなさんが落語家だったらこの2人のあとに落語やりたくないでしょう」

「このまま流れ解散にして家に帰って志ん朝DVDみたほうが」などと気弱な発言の後

まさかの紺屋高尾

立川の型(談春さんかな)とはいえ久蔵が切ないほどいじらしいという型ではなく

笑いどころの多い紺屋高尾だったのは、その前の「流れ」を汲んでのことか。


花緑さんの切ない久蔵が聞きたかったなあ、志ん朝ってなんで死んだんだっけ

生きているうちに聞きたかったなあ、と話す30-40代の男性2人の感想を

後ろから聞きながら。


数々の名演を産んだ郊外のホールをあとにする。

立川流が好き! 落語会

 吉笑さんが仕掛け人の立川流落語ユニットの会。

今回は満を持しての国立劇場演芸場。

出演者の気分も上がるようだが。


吉笑:ぞおん(新作)

寸志:酢豆腐

こはる:芝居の喧嘩

中入り

志ら乃:強情灸

志の太郎:しょっちゅう見舞い(新作)

談吉:鼠穴


少々遅れて駅につき、

かつ雨の夜でまさかの路に迷うアクシデント。

吉笑さんの最後のほうに滑り込む。

寸志さんは達者な古典。

こはるさんは伝法な噺をぽんぽんと。

ただし、女性を感じさせない発声(のどに負担をかけている)ではこの手の噺は

なかなか辛そうではある。

志ら乃さんの強情灸は師匠譲り(?)の妙な間合いの人が

ちょっとしたアクセントに。

志の太郎さんは新作で、頑固なおじいさん同士の

心温まる交流を描く。

そしてトリの談吉さん。

談志最後の直弟子だけに花をもたせる風は相変わらずで

「季節に合わないネタですがいいですか」と

二度ほど言い訳しながら渾身の鼠穴。

最後は写真撮影タイムをもうけ

トークライブと次回の落語会の予告まで。


トークライブビジネスモデル、というのは

なんだか余計な気もしたが。

談志師匠に捧げる孫弟子&最後の直弟子の若手会。

成金の人気には及ばないにせよ、なかなか頑張っているなあと。

暖かいお客さんに恵まれて、満席とは言えない入りにしても。

まずまず、立派につとめたのでは、と。