花緑、喬太郎、一之輔と

「柳の家の三人会」ならぬ「柳の家に春風が」のシリーズ。

要するに当代の人気者を集めた会なのだが。

三者三様というべきか。

前座の緑助さんのあと、客席を温めようと下ネタ(風)のマクラではじめ

池袋なら食いついてくるのに町田はざあっと引きましたねと笑わせる喬太郎さん。

 

一之輔さんは、柳家から(柳亭市馬さんふくめ、三三さんなどが入れ替わり)3人

そろわない時だけ、私に声がかかるといい、思いつきのようにはじめた

時事ネタ松山千春の物まねが案外受けて、

談志さんの物まねをしたのだが毒舌ぶりが同じで案外似ている。

 

花緑さんは、喬太郎さんと一之輔さんでさんざん笑い疲れたお客さんの前に

トリで高座に上がる身にもなって欲しいと言って笑わせる。


 

緑助:たらちめ

喬太郎:夢の酒

中入り

一之輔:鮑のし

花緑:紺屋高尾


喬太郎さん、おちついた風で夢の酒をはじめ

随所でテンション高く思わせぶりにひっぱり笑わせる。

笑いを取るのにも、この安定感。


一之輔さん、

大家さんを甚平さん(与太郎キャラ)がこんちわと尋ねると

速攻「帰れ」といわれるまさかでドライな展開で飛ばす。

ひきつった男性の高笑いと男性が耐え切れず吹きだす音が充満する

男殺しの爆笑の鮑のし


そのあとで高座にあがり、

「いくら持ちネタだからって寿限無をやるわけにもいかないし」

「みなさんが落語家だったらこの2人のあとに落語やりたくないでしょう」

「このまま流れ解散にして家に帰って志ん朝DVDみたほうが」などと気弱な発言の後

まさかの紺屋高尾

立川の型(談春さんかな)とはいえ久蔵が切ないほどいじらしいという型ではなく

笑いどころの多い紺屋高尾だったのは、その前の「流れ」を汲んでのことか。


花緑さんの切ない久蔵が聞きたかったなあ、志ん朝ってなんで死んだんだっけ

生きているうちに聞きたかったなあ、と話す30-40代の男性2人の感想を

後ろから聞きながら。


数々の名演を産んだ郊外のホールをあとにする。

立川流が好き! 落語会

 吉笑さんが仕掛け人の立川流落語ユニットの会。

今回は満を持しての国立劇場演芸場。

出演者の気分も上がるようだが。


吉笑:ぞおん(新作)

寸志:酢豆腐

こはる:芝居の喧嘩

中入り

志ら乃:強情灸

志の太郎:しょっちゅう見舞い(新作)

談吉:鼠穴


少々遅れて駅につき、

かつ雨の夜でまさかの路に迷うアクシデント。

吉笑さんの最後のほうに滑り込む。

寸志さんは達者な古典。

こはるさんは伝法な噺をぽんぽんと。

ただし、女性を感じさせない発声(のどに負担をかけている)ではこの手の噺は

なかなか辛そうではある。

志ら乃さんの強情灸は師匠譲り(?)の妙な間合いの人が

ちょっとしたアクセントに。

志の太郎さんは新作で、頑固なおじいさん同士の

心温まる交流を描く。

そしてトリの談吉さん。

談志最後の直弟子だけに花をもたせる風は相変わらずで

「季節に合わないネタですがいいですか」と

二度ほど言い訳しながら渾身の鼠穴。

最後は写真撮影タイムをもうけ

トークライブと次回の落語会の予告まで。


トークライブビジネスモデル、というのは

なんだか余計な気もしたが。

談志師匠に捧げる孫弟子&最後の直弟子の若手会。

成金の人気には及ばないにせよ、なかなか頑張っているなあと。

暖かいお客さんに恵まれて、満席とは言えない入りにしても。

まずまず、立派につとめたのでは、と。

 

松田権六の文箱

芸大美術館で有名作家の卒業制作作品がかなり出品されていて興味深く見る。

中でも松田権六の文箱(こじんまりしたいい形)が気にいる。

 

まだ若いころからこのくらいの作品を作っていたのかと。

 

蓋裏には咆哮する獅子。

表には逃げ惑う草食動物たち、という見立ても楽しい。

 

同じく板谷波山の卒業制作は木彫で

当初は木彫を志したのか、というのも驚きだが

これもまた端正である。

 

若書きという言葉があるが

若いうちから完成度の高さが感じられる作家というのは

一定数いる。

どうということもなく、ただそうなのだ、というだけなのだが。

 

 

あおやぎを買ってきて

 母のところに供える。


両親の実家のある海辺ではこの貝が昔はよく取れて

干したものをあぶったり

ちょっときざんでから味噌で煮付けたり

もちろん刺身でも甘くておいしいのだが。


近所のスーパーで時々出回る。

大きめのパックを買ってきて

お母さん、めずらしいものがあったよと。


今日はなじみの店でゆっくりと昼食を取り

一杯のワインをゆっくりとあけて

めずらしくすいていたので、店員さんと他愛もないやりとりを。


薦められたヴァイツェンビールドイツのもので

(ヘフェ・ヴァイツエン)

よく似た名前のどくろのパッケージのメキシコのものしか見つけられず

まあ、それもご愛嬌。


今日はいい休日だった、そんな足元だけ見つめて

一日、日が暮れる。

立川流トークライブにいく

ずいぶんと怪しい歌舞伎町の一角。
ライブハウスらしいが。


若手の元気な意見や宣言を聞きながら
いずこの組織もあれこれあるのだと思いいたる。
特になにやらクリエイティブなことをやっているところは
管理系や働く基盤整備をする人が薄く
システムの未整備から来る効率の悪い働き方を強いられたり
情報伝達が悪かったり。


会社や組織共通の利益をしっかり定めて
そこだけでも合理的でよいやり方をすればいいだけなのだが。


好きだけでつづけられる人が多い場所ほど
働きやすい仕組み作りはないがしろにされる。


家に戻り、急転直下したことで久々に会った身内の若い子からも
同じような悩みを聞く。
(でも、その仕事を私がやるのは違うの、と)
ひとつのことが、いろいろなことにつながる。


いまはそのフェイズ。

 

真実の10メートル手前

読み始めて、流行りのイヤミスかと思うが

読後感は悪くなかった。

読後感に救いがある理由ははっきりしている。

 

主人公の、グロテスクな真実を前にした

決して正義感だけではない、

悩みながらも一貫した態度を取ろうとする

筋を通そうとするその態度が、救いなのだろう、と。

 

やりきれない、うんざりするような他者とのせめぎあいの中。

 

自分を含めた、人間の弱さやどうしようもなさを肯定して

その上で何ができるか。

そんな姿勢に。

 

それにしても、いまどきこんな姿がはまるのは

若くて芯の強い女性だけなのだろうか。

 

案外、それも真実かもしれない、と。

 

 

 

 

成金で落語に王手

なかなかいいタイトルだ、と思う。
成城落語会のおすすめの会、ということもあって。
ここしばらく、ややこしいことが続発してもう無理かと思ったのに
なぜかスポッと時間が取れて奇跡のような時間となる。


さて、幕が上がると2人が着物、2人が洋服のままトーク
出の順はじゃんけんで決めたらしいが、釈台がでていることから
松之丞と知れる。
どうやら成金は11人のグループらしく、今日はその中から4人選抜
ということらしい。
会場は若手の会にしてはめずらしく満席。


神田松之丞:大高源吾
柳亭小痴楽:花見の仇討ち
中入り
春風亭昇々:弘法大師(新作)
滝川鯉八:長崎(新作)


前半は古典、後半は新作というのは
単なる偶然のようだが。


トークで並ぶと松之丞さんと小痴楽さんの顔の大きさの違いが際立つ。
小痴楽さんは着物の趣味も着こなしもまずまず。
後で知ったが、父上は先代痴楽。おや二世でしたか。


さて、開口一番は松之丞さん。
ホワイトデーに、わざわざ落語を聞きにくるという皆様には
といいながら、どうやら渋めのものを選ぶらしい。
開口一番には不似合な演目を、といい会場の明かりをしぼり「大高源吾」へ。
前回聞いた話(「雷電初土俵」)とは打って変わり、じっくり聞かせる。
なるほどこうして聞けば、若さに似あわずうまい人らしいと知れるが。


次にあがる小痴楽さんはさぞややりにくいだろうと思うも
おそらくはそれはそれと、すべったり噛んだり言い間違えたりしながらも
愛嬌なのか、機転なのか、場数を踏んでいることからくる度胸なのか、
はたまた人気上昇中の勢いやら自信なのか。
うまくはないのだが、勢いで押し切ってしまいそこそこ受けつつ高座をおりる。
当人は少々微妙な表情で降りたことからして、何やら言いたいことはありそうだが。


さて、熱演が続き時間オーバー気味。仲入りは10分とのこと。
小雨の降る寒い外に、ちらっと出て冷たい空気を吸う。


会場に戻り、後半最初は昇々さん。春風亭で昇の字だから昇太さんのお弟子さんか。
師匠に似てさほど滑舌はよくないが、こちらもおかしみで押してぐいぐいいく。
新作だけに、うまさというよりはキャラクターも出て
ナンセンスな笑いこちらも受けて降りる。


続いて鯉昇さんのお弟子さんか、鯉八さん。
こちらも新作。
独特の間合いとキャラで笑いを積み上げる。
つぼにはまって吹きだす人多数。


総じて若手の勢いと上り調子、時分の華やかさのある
笑いの多いいい会だった(松之丞は置くとして)。
もちろんまだまだ粗削でへたくそなのだが(松之丞は置くとして)、
若い子はいいねえ勢いがあって、などと年寄りのように。


吉笑さん、やっぱり立川の若手は負けてるんじゃない?
なんてひっそり笑いながら。
お頑張りなさい、若いんだから、と年寄りの猫のように。
しっぽをゆるゆると振って。
今日はここまで。